内科的な診療をきちんと行った上で、心理面も合わせてトータルに患者という「人」そのものを診ようとしている藤原内科こころクリニックを取材しました。


<取材協力>
藤 原 英 明
(藤原内科・こころクリニック 院長)
藤 原 典 子

<藤原内科・こころクリニック副院長>

藤原内科・こころクリニック詳細ページ

「メディカルページ平成19年度改訂版」(平成19年11月20日発行)
の冊子に掲載された記事です。


 「患者さんの健康を内科的に管理しながら、いやしの場所にもなりたい」。自らの病院の理念をこう語るのは、2007年8月に開業した「藤原内科こころクリニック」の藤原院長。藤原院長はもともと、「何でも相談できる医者」を自分の理想として医学部に入り、その後の研修を積んだ。
 心と体の相関関係を強く実感するようになったのは、夜間診療所に勤務していた時のことだ。夜間診療所には時折、不安などの心理的要素が原因で心臓の異常など身体的な症状を訴える患者が訪れる。こうした患者は、日中に内科の診察を受けても異常なしと診断され、精神科にかかっても薬を出されるだけ。しかし、一向に良くならない。
 「薬では良くならない患者さんなんだろうなと思った。そこで、よくよく話を聞いたり支持的に癒すような接し方をすると、力になれることがあった」と藤原院長は当時を振り返る。そうした自らの医師としての実体験を踏まえて開業した「藤原内科こころクリニック」は、内科的な診療をきちんと行った上で、心理面も合わせてトータルに患者という「人」そのものを診ようとしている。
 基本的には内科である同院には、さまざまな症状を訴える患者が訪れる。藤原院長は患者の訴えによく耳を傾けた上で、「内科的な病気ではなく、心理的な負荷が原因だろう」と判断した場合には、同院の藤原典子心理士のカウンセリングを受けてもらうことにしている。カウンセリングは1回約40分。もちろん、患者の側からカウンセリングを希望することも可能だ。
 「なかなか診察室で話してくれない患者さんも、カウンセリングではよく話してくれているみたいだ」と笑う藤原院長。そこで、藤原典子心理士に実際のカウンセリングについて聞いた。

■藤原先生夫妻


 「患者さんの様子や外観全体を観察します。技術的な事っていうのはそんなにないんじゃないかなと思うんですけど…。その方その方によって雰囲気や出すエネルギーが違うので、自分のイメージとしては波のような感じでそれを受け止められるようにという姿勢で座ります。患者さんがいろいろ話してくださることに共感しながら聞くということですね」。

 このインタビューは、実際にカウンセリング室で藤原心理士と向かい合って行われた。テーブルの向こう側の穏やかな微笑みを見ると、思わず私も余計なことまでしゃべりそうになったというのが実感である。「何でも受け入れますよ」という雰囲気が全身から出ているのだと思う。


 「箱庭療法は、区切られた砂の上に人形や家などを好きなように置いて世界を作ってもらうというものです。若い方、特に不登校のお子さんなどにやってもらっています。これには、心理状態を知るというテスト的な面もありますが、ほとんどは治療です。子どもって思ったことをすべて表現できるわけではないので、こういうものを作ることによって表現してもらうということですね」。


■箱庭療法で実際に使用するアイテム


 まだそんなに多くはないです。本当はこれを取り入れるのはもっと先にしようと思っていたんですが、小学生から高校生までの患者さんが多くて、じゃあ必要だなと思って取り入れました」。


 「友だち関係・人間関係で悩んでいる方が多いですね。学校で出しているのは本当の自分ではない、と。今の子どもたちは、『暗い』のは駄目らしいんですね。笑顔を貼り付けて、いつもいつも笑っている顔をして、おもしろいことを言ったりして、人に接しないと、『あの子は暗い』と言われてしまう。でもそこに自分との開きがものすごくあって、それがつらいという子がとても多いです。学校心理士会の集まりでも、子どもたちが表面上の付き合いをしていて、実際に話せる人がいないという話が出ます。仮面をかぶっているような明るさと言うんでしょうか」。


 「診断名では不安障害が多いですね。それから、パニック障害。そこまで行かなくても、息が苦しくなるとか学校に行こうとするとお腹が痛くなるなどのいろいろな症状が表れるという方がおられます」。


 「子どもが学校に行けなくなったとか、あるいは内科的な症状があるのに小児科では異常がないと診断されたということで親御さんと一緒に来院されて受診される場合が多いです」。


「これは、心理士がお子さんと実際に遊びます。大体小学生が対象です。子どもにとって、遊びで表現するのはとても大きな要素なんですよね。遊び込むことによって、いろいろなことが表現できます。たとえば遊び込むことによってある種の攻撃性が表れるようになります。遊びを通して、自分が働きかけることによって相手がどう受け取るかという関係を学ぶことができます。自己表現と社会性を学ぶということで、とても大きな意義があると思います。
 このほかにも、将来的には家族療法を取り入れたいと思っています。患者さん一人の問題ではなく、一番近い社会として家族のあり方がいろいろな問題を含んでいることが多いです。特に子どもの場合には、家族自体が少しずつ変わっていけると一番効果的に治療ができると思っています。それで、必要があれば家族の方に来ていただいて、お話を伺うことによって家族のあり方や問題のありかを探ることができます。まだ当院では行っていませんが、ご希望があれば行いたいと思います。
 カウンセリングをしていると、子どもにどう接してよいかわからない、と口にされる親御さんが結構多いんですね。心理的なテストをすると、子どもが認知する親の像と親が接しているつもりとの間にギャップがあることがわかります。親はこう接しているつもりなのに、子どもはそう受け取っていない。親子関係は特に小さいうちはとても大切ですから、そういうこともカウンセリングとしてやっていきたいと思っています」。

 当初は心療内科として子どもの診察に力を入れようと特に思っていたわけではないとのことだが、社会的な現実としてたくさんの子どもたちが藤原内科こころクリニックを訪れ、心療内科を受診している。同院ではまだ開院間もないが、そうした患者さんの傾向に素早く対応してきた。もちろん大人で心療内科を受診する患者さんも少なくない。


 「うつの方と不安障害の方が多いですね。でも、本当にめきめきと良くなるんですね。この3ヶ月間でも別人のように変わる様子を見て、こちらも本当にうれしくなります。
 お薬も大事ですが、他の人に対して表現できる、話すことによって気付きを得るということの積み重ねによって患者さんは少しずつ変容していくことができます。それを本当に守って支えたいと思います。それによって患者さんの自己がだんだん強くなり、回復していく様を目の当たりにできて、とても幸せなことだと思っています」。
 心療内科や精神科を受診することに対する社会的な抵抗感は、以前に比べるとなくなってはきているものの、いざ自分が受診しなければいけないとなると二の足を踏む人もまだまだいる。藤原心理士は、心療内科にかかる目安としてこんなことを教えてくれた。

 「大人の場合は、以前の自分と何か違うなと感じたら、子どもの場合は、今までのこの子とちょっと違うと親御さんが気付いたら、受診してみてください。子どもの変化によって親御さんご自身が心理的に追い詰められている場合もありますので、溜まっていることを話せたらいいかなと思って来ていただいてもいいですよ」。

 「当院は心理士だけでなく、職員一同『共感・受容・支持』という思いを皆で同じように持って患者さんを迎え入れましょう、と言っています」(藤原院長)と、患者一人一人を個人として温かく受け入れる姿勢を明確に示す藤原内科こころクリニック。文字通り「何でも相談できる医者」として頼りにできる病院だ。
●PROFILE

Hideaki Fujiwara

Noriko Fujiwara
藤原 英明
<藤原内科・こころクリニック 院長>
藤原 典子
<藤原内科・こころクリニック 心理士>
●所属学会 日本内科学会/日本心療内科学会

■宮崎県宮崎市出身
■東京外語大学卒業
■宮崎大学医学部(旧宮崎医科大学)卒業
■長野県厚生連「佐久総合病院」にてスーパーローテイト研修後、同病院 総合内科 勤務
※佐久総合病院:NHK TV「プロジェクトX〜挑戦者たち」にとりあげられた地域医療・先端医療の基幹病院です
■2000年から函館にて 稜北病院・夜間急病センター・ななえ新病院 勤務
■宮崎県宮崎市出身
■2000年から函館にて
■放送大学「発達と教育」専攻 卒業
■北海道教育大学大学院 「学校臨床心理」卒業
 (教育学修士)
■現在 北海道大学大学院 博士課程 在学中
■2006年 富田病院 勤務