下肢静脈瘤の治療に北海道でも3台しかないというレーザー治療機を導入している共愛会病院を取材しました。


<取材協力>
立 石    晋 
(共愛会病院 副院長)
折 原    暁
 氏
(共愛会病院 外科部長)

共愛会病院詳細ページ


共愛会病院オフィシャルページ

「メディカルページ平成19年度改訂版」(平成19年11月20日発行)
の冊子に掲載された記事です。


このタイトルを見て「下肢静脈瘤?よくわからないけど自分には関係なさそう」と思った方も、一度ご自分の足をチェックなさることをお勧めしたい。ふくらはぎやすねなどの下肢の血管が浮き出ていたりボコボコとふくらんでいるように見えたりしたら、下肢静脈瘤の症状に該当する可能性は非常に高い。下肢静脈瘤は病名こそあまり知られていないが、ある調査によると15歳以上では43%が、さらに70歳以上に限ると実に75%もの人が何らかの静脈瘤を持っているとされる。静脈瘤は決して「他人事」ではないようだ。

共愛会病院では下肢静脈瘤の治療に北海道でも3台しかないというレーザー治療機を導入しており好評を博しているとのことだが、そもそも下肢静脈瘤とはどんな病気なのかから理解するために、治療を担当している外科医に話を聞いた。


 一番わかりやすいのは見た目ですね。ふくらはぎやすねなどの表面がボコボコしてきます。そのほか、足がだるいもしくは重苦しいなどの感じや、かゆみ、しっしん、熱感、こむら返りなどが自覚症状として挙げられます。
 下肢静脈瘤の原因は、血管内の弁が壊れることです。静脈には弁があり、下から上に向かっては血液が流れますが、上から下には流れないようになっています。ところがこの弁が壊れると、血液が重力に従って上から下に逆流し、足の下のほうに血液がたまり、静脈がふくれて静脈瘤になります。
 弁が壊れる直接の原因については、はっきりしたものはありません。しかしながら、下肢静脈瘤になりやすい要素は幾つかあります。まず、加齢。20代・30代から徐々に増えはじめ、年齢を重ねるほど割合は増えます。また、立ち仕事をしている方、妊娠出産を経験した方。妊娠出産によって静脈が圧迫され、弁が壊れるようです。性別では圧倒的に女性が多いですが、これは家事などで立ち仕事が多かったり出産を経験しているからだと思われます。



 悪くなることはあっても、良くなることは決してありません。症状が進行すると色素沈着と言って幹部が茶色くなったり、皮膚炎になったり潰瘍を起こしたりします。
立 石   晋 <共愛会病院 副院長>
Moyuru Tateishi  1960.1.20生まれ
■昭和62年 北里大学医学部卒
専門分野/外科(一般外科・消化器・乳腺・静脈瘤)
日本外科学会 外科専門医・日本消化器内視鏡学会 専門医/日本消化器外科学会 認定医
 ただ、下肢静脈瘤で病院に来られる患者さんの多くは、10年も20年もこの病気を抱えておられた方です。初期症状が自分では自覚しにくいことや症状が徐々に悪化するので変化に気付きにくいことが原因として挙げられます。急激に進行するものではないため「年のせい」と思い込み、病院にかかるきっかけをつかめず伸ばし伸ばしにする方が多いようです。


 当院ではアメリカ製の「クールタッチレーザー」という機械を使用しています。北海道ではこれを含めてわずか3台、全国でも20台程度しか導入されていない機器です。
 治療は、足のどこかを数ミリから最大で3cm程度切開して血管の中にレーザーのファイバーを入れ、内側から血管を焼いて静脈を閉じてしまいます。治療時間はわずか30分程度、入院の必要がなく日帰りで行える手術です。
折 原  暁  <共愛会病院 外科部長>
Akira Orihara 1971.5.2生まれ
■平成8年 山形大学医学部卒
専門分野/外科(一般外科・消化器・乳腺・ソケイヘルニア)
日本外科学会認定医・外科専門医


 他の療法に比べて患者さんの身体的負担が軽いこと、そして安全性が高いことです。下肢静脈瘤の治療における根治的な治療としては、ワイヤを使って静脈を引き抜いてしまう「ストリッピング手術」が広く行われています。これはおよそ100年前から行われている治療法ですが、手術に際して必ず内出血を伴うというデメリットがあります。また下半身もしくは全身麻酔が必要で手術後も入院が必要であり、日常生活に復帰するまでにある程度の期間が必要です。
 一方レーザー治療はストリッピング出術に比べて痛みや傷が格段に少なくてすみ、手術後すぐに自分の足で歩いて帰ることも可能です。訴訟社会のアメリカでは医療に関して安全性の高さが問われるためレーザー治療に対する注目度も高く、すでに下肢静脈瘤の患者さんの6,7割がレーザー治療を受けていると聞いています。



 足のだるさと足の表面のボコボコに20年ほど悩んでいた70代後半の男性がレーザー治療を受けられました。傷も残らず、「痛みもまったくなかった」と話され、足がきれいになったと感激して帰られました。



 まず超音波検査等を行ってどの弁が壊れているかを診断します。次いで治療方針を決定し、術前の検査を行い、術式について説明をします。ここまで最短で1日で行えますので、次に来院された時には手術が可能です。手術を受けて1週間後くらいに来院してもらい、必要であれば他の療法を併用します。平均的には手術後3回くらいの通院で済んでいるようです。



 下肢静脈瘤で問題になるのは「表在静脈」という皮膚のすぐ下を通る静脈です。実際には下肢にはもっと足の中心部を通る「深部静脈」などたくさんの静脈が走っています。ですから他の静脈に異常がなければ、表在静脈を焼いたり抜いたりしても問題はありません。



 下肢静脈瘤を治療することで足の見た目もきれいになりますし、足が軽くなったように感じ疲れにくくなります。また、レーザー治療は、これに加えて傷も少なくてすみますし術後の大変な思いを少なくしてくれます。実際に費用的な面を考えても、ストリッピング手術では術後入院が必要ですから、その入院費用も含めて比較するとそんなに差が出ないと思います。
 下肢静脈瘤は放っておいても治りませんし薬でも治りません。「足がだるい」「夕方になると足がむくむ」といった下肢静脈瘤の症状に対して「病気だ」という認識がまだ少なく、年のせいなどと考えられがちです。ですが治せるものだとわかっていただけると、お金を出そうという気になる方が多いようです。
 ただ、私どももレーザー治療をすべての患者さんにお勧めしているわけではありません。より簡単な治療で済み、レーザー治療まで必要のない患者さんもおられますし、実際にレーザー以外の治療のほうが圧倒的に件数は多いです。費用的な心配をされるより、まず思い当たることがあったらご来院ください。

病気であると認識されにくい下肢静脈瘤だが、割合から言うと静脈瘤を持つ人はかなり多いはず。両医師は「立ち仕事をしておられる方、そして経産婦の方は一度受診なさることをお勧めします」と話している。レーザー治療は健康保険対象外ではあるが、患者の選択肢を広げるという意味では、ここ函館でそうした医療が受けられることを歓迎したい。
共愛会病院  http://www.kyoaikai-hosp.com/
函館市中島町7番21号 TEL 0138-51-2111   ■休診日 日曜・祝日・駐車場180台(地下駐車場含む)